従業員から「妊娠しました」と報告を受けたとき、会社として何から対応すればよいのでしょうか。
妊娠・出産・育児に関しては、産前産後休業や育児休業だけでなく、妊娠中の勤務への配慮、育児休業制度の個別周知、社会保険や雇用保険の手続き、育児休業からの職場復帰など、長期間にわたってさまざまな対応が必要になります。
妊娠・出産・育児に関する会社の制度は、労働基準法や育児・介護休業法、健康保険法、雇用保険法など複数の法律にまたがっており、決して単純ではありません。初めて経験する社員にとっても、初めて部下や同僚を送り出す上司や人事担当者にとっても、戸惑うことが多いテーマです。
特に近年は育児・介護休業法の改正が続いており、2025年10月からは、本人または配偶者の妊娠・出産の申出を受けた際に、仕事と育児の両立について本人の意向を個別に聴取し、その意向に配慮することも事業主に義務付けられています。
この記事では、従業員から妊娠の報告を受けてから、産休、出産、育児休業、職場復帰まで、会社が何をすればよいのかを時系列で解説します。
妊娠から職場復帰までの流れをまず確認しよう
妊娠の報告を受けてから職場復帰するまでの大まかな流れは、次のとおりです。
| 時期 | 従業員の状況 | 会社の主な対応 |
| 妊娠の申出 | 妊娠・出産予定日を会社へ報告 | 個別周知・意向確認、仕事と育児の両立に関する意向聴取 |
| 妊娠中 | 通院しながら勤務 | 健康診査の時間確保、医師等の指導に応じた勤務上の配慮 |
| 出産前 | 産前休業 | 休業開始日の確認、社会保険等の手続き |
| 出産 | 出産 | 実際の出産日を確認 |
| 出産後 | 産後休業 | 産後休業期間の管理、社会保険・給付関係の手続き |
| 育児休業 | 育児に専念 | 育児休業、雇用保険、社会保険等の手続き |
| 復職前 | 復職の準備 | 復職日、勤務時間、利用する両立支援制度等を確認 |
| 復職後 | 育児と仕事を両立 | 時短勤務、残業免除、子の看護等休暇などに対応 |
妊娠・出産に関する手続きは、「産休に入るときだけ」「育休を取るときだけ」発生するものではありません。
妊娠の申出を受けた時点から、職場復帰後まで継続して管理していく必要があると考えておくとよいでしょう。
STEP1 従業員から妊娠の報告を受けたら
出産予定日などを確認する
まず確認しておきたいのは、出産予定日です。
出産予定日が分かれば、産前休業の開始予定日や、その後の産後休業、育児休業のおおよそのスケジュールを把握できます。
あわせて、本人が現時点で考えている内容も確認しておくと、その後の対応がスムーズになります。
- 産前休業の取得予定
- 育児休業を取得する予定があるか
- おおよその復職時期
- 妊娠中の働き方について希望すること
ただし、妊娠した時点で育児休業期間や復職後の働き方まですべて確定できるとは限りません。本人の体調や家庭の状況などによって予定が変わることもあるため、最初からすべてを確定させるのではなく、必要な時期に改めて確認していくことが大切です。
育児休業制度などを個別に周知する
育児・介護休業法第21条第1項
本人または配偶者の妊娠・出産等について労働者から申出があった場合、会社はその労働者に対して、育児休業制度等について個別に周知し、休業取得の意向を確認する必要があります。
個別に周知しなければならない事項は、次の4つです。
- 育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)に関する制度
- 育児休業・出生時育児休業の申出先
- 育児休業給付に関すること
- 育児休業・出生時育児休業期間中の社会保険料の取扱い
単に就業規則を渡したり、「育休を取るなら言ってください」と伝えたりするだけではなく、会社側から必要な情報を個別に伝えることがポイントです。
仕事と育児の両立について本人の意向を聴く
育児・介護休業法第21条第2項・第3項
2025年10月1日からは、本人または配偶者の妊娠・出産等の申出を受けた際に、会社が仕事と育児の両立について本人の意向を個別に聴取し、その意向に配慮することが義務となっています。
具体的には、次のような事項について本人の意向を確認します。
- 始業・終業時刻などの勤務時間帯
- 勤務地
- 両立支援制度等を利用したい期間
- 業務量や労働条件など、仕事と育児を両立するための就業条件
「育児休業を取るか、取らないか」だけを確認するのではなく、今後どのような働き方を希望しているのかまで話を聞くことが求められています。
妊娠・出産等を申し出た時のほか、労働者の子が3歳になるまでの適切な時期にも、子や各家庭の事情に応じた仕事と育児の両立に関する事項について、労働者の意向を個別に聴取しなければなりません。
| 育児休業制度等の個別周知・意向確認 | 仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮 | |
|---|---|---|
| 目的 | 育児休業等の制度を知らせ、取得するかどうかを確認する | 本人がどのような働き方を希望しているかを確認し、仕事と育児の両立を支援する |
| 施行時期 | 2022年4月1日 | 2025年10月1日 |
| 実施する時期 | 本人または配偶者の妊娠・出産等の申出時 | ①本人または配偶者の妊娠・出産等の申出時 ②子が3歳になる前 |
| 主な内容 | ①育児休業・産後パパ育休の制度 ②申出先 ③育児休業給付 ④休業中の社会保険料の取扱いを周知し、休業取得の意向を確認 | ①勤務時間帯 ②勤務地 ③両立支援制度等の利用期間 ④業務量・労働条件など仕事と育児を両立するための就業条件について意向を聴く |
| 会社が確認するイメージ | 「育児休業を取得しますか?」 | 「復職後は何時から何時まで働きたいですか?」
「勤務地や業務量について希望はありますか?」 |
| 会社に求められる対応 | 個別に周知し、育児休業等を取得する意向があるか確認する | 本人の意向を個別に聴取し、その意向について自社の状況に応じて配慮する |
| 位置づけ | 「制度利用」に関する確認 | 「今後の働き方」に関する確認 |
両立支援のひろば|Q3:女性従業員が妊娠・出産の申し出をした場合や男性従業員が配偶者の妊娠・出産の申し出をした場合、事業主に義務付けられていることはどんなこと?
厚生労働省では、「個別周知・意向確認」と「個別の意向聴取」をまとめて行える参考様式も公開しています。
下記の厚生労働省のサイトに、
「13-1 (妊娠・出産等申出時)個別周知・意向確認書、個別の意向聴取書記載例」
が掲載されています。
厚生労働省|育児・介護休業等に関する規則の規定例
STEP2 妊娠中の働き方に配慮する
妊婦健診を受けるための時間を確保する
男女雇用機会均等法第12条
会社は、妊娠中または出産後の女性従業員が、保健指導や健康診査を受けるために必要な時間を確保できるようにしなければなりません。
※ 健康診査等を受診するために確保しなければならない回数
妊娠中
- 妊娠23週までは4週間に1回
- 妊娠24週から35週までは2週間に1回
- 妊娠36週以後出産までは1週間に1回
産後(出産後1年以内)
- 医師等の指示に従って必要な時間を確保する
したがって、「妊婦健診は休日に行ってください」と一律に扱うことはできません。なお、健康診査等のために確保した時間を有給にするか無給にするかについては、会社の規定によります。
医師等から指導を受けた場合は必要な措置を行う
男女雇用機会均等法第13条
妊娠中は、つわりや体調の変化などによって、従来どおりの勤務が難しくなる場合があります。
健康診査等を受けた結果、医師等から指導を受け、従業員から申出があった場合には、会社は指導内容に応じて必要な措置を講じます。
※ 指導事項を守ることができるようにするための措置
- 妊娠中の通勤緩和(時差通勤、勤務時間の短縮等の措置)
- 妊娠中の休憩に関する措置(休憩時間の延長、休憩回数の増加等の措置)
- 妊娠中又は出産後の症状等に対応する措置(作業の制限、休業等の措置)
医師等からの指導内容を会社へ正確に伝えるためには、「母性健康管理指導事項連絡カード」を利用する方法もあります。
労働基準法における母性保護規定
また、妊娠中の女性から請求があった場合には、他の軽易な業務への転換など、労働基準法上の母性保護規定にも注意が必要です。
(1)産前・産後休業(労働基準法第65条第1項及び第2項)
産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)<いずれも女性が請求した場合に限ります>、産後は8週間女性を就業させることはできません。(ただし、産後6週間を経過後に、女性本人が請求し、医師が支障ないと認めた業務については、就業させることはさしつかえありません。)
(2)妊婦の軽易業務転換(労働基準法第65条第3項)
妊娠中の女性が請求した場合には、他の軽易な業務に転換させなければなりません。
(3)妊産婦等の危険有害業務の就業制限(労働基準法第64条の3)
妊産婦等を妊娠、出産、哺育等に有害な業務に就かせることはできません。
(4)妊産婦に対する変形労働時間制の適用制限(労働基準法第66条第1項)
変形労働時間制がとられる場合であっても、妊産婦が請求した場合には、1日及び1週間の法定時間を超えて労働させることはできません。
(5)妊産婦の時間外労働、休日労働、深夜業の制限(労働基準法第66条第2項及び第3項)
妊産婦が請求した場合には、時間外労働、休日労働、又は深夜業をさせることはできません。
(6)育児時間(労働基準法第67条)
生後満1年に達しない生児を育てる女性は、1日2回各々少なくとも30分の育児時間を請求することができます。
厚生労働省|働く女性の母性健康管理措置、母性保護規定について
STEP3 産前休業に入る
産前休業の開始日を確認する
出産が近づくと、「産前産後休業」、いわゆる産休の期間に入ります。
産前休業の開始日を確認します。
産休は次の2つに分かれます。
- 産前休業:出産予定日の6週間前(多胎妊娠の場合は14週間前)から、本人が請求すれば取得できる休業
- 産後休業:出産日の翌日から8週間、原則として就業させることができない休業
ここで重要なのは、産前休業と産後休業では性質が異なるという点です。両者の違いを理解しておきましょう。
産前休業は「本人が希望すれば取得できる」任意の休業であるのに対し、産後休業(出産後6週間まで)は、たとえ本人が働きたいと希望しても、会社は就業させることができません。
ただし、産後6週間を経過した後は、本人が請求し、医師が支障ないと認めた業務に限り就業させることが可能です。
また、産前産後休業は正社員だけの制度ではありません。パート・アルバイトや有期契約労働者であっても、労働基準法上の労働者であれば対象になります。
多胎妊娠の場合は、産前休業を取得できる時期が出産予定日の14週間前からとなるため、通常より早めにスケジュールを確認しておきましょう。
社会保険の手続きも忘れずに
健康保険・厚生年金保険の被保険者が産前産後休業を取得した場合、会社からの届出により、産前産後休業期間中の健康保険料・厚生年金保険料が免除されます。
会社は「産前産後休業取得者申出書」を日本年金機構へ提出します。
日本年金機構|産前産後休業を取得し、保険料の免除を受けようとするとき
また、健康保険の被保険者本人が出産のために会社を休み、その間に給与の支払いを受けられないなど一定の要件を満たす場合には、出産手当金が支給されます。
協会けんぽ|出産手当金
STEP4 出産したら実際の出産日を確認する
出産予定日と実際の出産日が違う場合に注意する
従業員が出産したら、会社は実際の出産日を確認します。
出産予定日と実際の出産日が同じとは限りません。
実際の出産日によって産前産後休業期間が変わることがあるため、予定日のまま管理し続けないよう注意しましょう。
例えば、出産予定日より出産が遅れた場合、予定日から実際の出産日までの期間も産前休業に含まれます。その場合でも、産後休業は実際の出産日の翌日から計算します。
また、社会保険の産前産後休業期間について変更が生じた場合には、必要な変更手続きを行います。
産前産後休業中の保険料免除を受けている被保険者について、実際の出産日が出産予定日と異なるなどして産前産後休業期間が変わった場合は、会社が「産前産後休業取得者変更(終了)届」を提出します。
出産後に必要となる手続きを進める
出産後は、主に次のような手続きを確認します。
- 出産育児一時金について本人へ案内する
- 出生した子を健康保険の被扶養者にする場合の手続きを行う
- 育児休業給付の申請に向けて必要な情報や書類を準備する
- 育児休業開始日や復職予定日を確認する
出産育児一時金
健康保険の被保険者または被扶養者が出産した場合には、一定の要件のもと出産育児一時金が支給されます。
多くの医療機関では「直接支払制度」が利用されており、医療機関等が本人に代わって出産育児一時金を保険者へ請求します。その場合、本人は退院時に、出産費用から一時金相当額を差し引いた金額を支払うことになります。
会社が直接手続きをするケースは多くありませんが、制度の概要を本人に案内できるようにしておくとよいでしょう。
厚生労働省|出産育児一時金について
協会けんぽ|出産育児一時金
出生した子の健康保険
出生した子を従業員の健康保険の被扶養者とする場合には、「健康保険 被扶養者(異動)届」などの手続きを行います。
夫婦ともに健康保険の被保険者である場合には、どちらの被扶養者とするか確認が必要になることもあります。
日本年金機構|家族を被扶養者にするとき、家族を被扶養者から外すとき、被扶養者の届出事項に変更があったとき
育児休業給付の準備
女性従業員の場合は、産後休業終了後に育児休業へ移行する場合が多いです。
育児休業を取得する場合は、育児休業給付の申請に向けて、必要な情報や書類を確認しておきます。
育児休業給付の申請に向けて、
- 実際の出生日
- 育児休業開始予定日
- 雇用保険の被保険者番号
- 賃金台帳
- 出勤簿・タイムカード
- 出生日や育児の事実を確認できる書類
など、必要な情報や書類を確認しておきます。
厚生労働省|育児休業給付金について
手続きはチェックリストで管理する
妊娠・出産・育児に関する手続きは、社会保険、雇用保険、育児休業など複数の制度にまたがり、長期間にわたります。
そのため、従業員ごとにチェックリストを作り、
「いつ・誰が・何をするのか」
を管理しておくと、手続き漏れを防ぎやすくなります。
特に出産後は、本人への確認事項と会社側の手続きが重なるため、産休に入る前から必要書類や今後のスケジュールを整理しておくことをおすすめします。
STEP5 産後休業から育児休業へ
産後休業と育児休業の期間を確認する
出産日の翌日から原則8週間は産後休業です。
産後休業については、産前休業とは異なり、本人から請求がなくても会社は女性を就業させることができません。
ただし、産後6週間を経過した女性本人が就業を請求し、医師が支障がないと認めた業務については、就業させることができます。
多くの場合、その後は育児休業へ移行します。会社は、次の事項を確認していきます。
- 育児休業の開始日・終了予定日
- 育児休業の申出書
- 雇用保険の育児休業給付関係
- 社会保険料免除
- 復職予定日
育児休業は原則として1歳未満の子を養育するための制度です。
ただし、保育園に入所できないなど、一定の事情がある場合には、1歳6ヶ月、さらに最長2歳まで延長することが可能です。
延長には、保育園の入所申し込みをしているにもかかわらず入所できなかったことを証明する書類の提出など、一定の要件があります。
「とりあえず延長できる」わけではなく、要件を満たす必要がある点には注意が必要です。
男性従業員には産後パパ育休
また、男性従業員については、2022年の法改正で創設された「産後パパ育休(出生時育児休業)」という制度もあります。
これは、子の出生後8週間以内に、男性が最大4週間(分割して2回まで取得可能)の休業を取得できる制度で、従来の育休とは別枠で取得できます。
夫婦で協力しながら育児にあたりたいと考える家庭にとって、選択肢を広げる制度といえるでしょう。
厚生労働省|育児休業特設サイト
厚生労働省|イクメンプロジェクト
STEP6 育児休業中も人事担当者の仕事は続く
育休中の申請や復職予定を管理する
従業員が育児休業に入ると、一旦手続きが終わったように感じるかもしれません。しかし、実際には育児休業中にも人事担当者が確認・対応する事項があります。
- 育児休業給付の申請
- 育児休業期間の変更
- 育児休業の延長
- 社会保険料免除の管理
- 復職予定日の確認
特に育児休業給付は、一定期間ごとに申請が必要となるため、申請漏れがないよう管理することが重要です。
また、保育所に入れなかったことなどを理由として育児休業を延長する場合には、延長の要件や必要書類を確認する必要があります。
妊娠の申出から育児休業終了まで長期間にわたるため、担当者の記憶だけで管理するのではなく、従業員ごとに手続き状況を一覧で管理しておくと安心です。
STEP7 職場復帰に向けて本人と確認する
復職するか、育児休業を延長するか確認する
育児休業の終了時期が近づいたら、職場復帰に向けた準備を進めます。
まず確認したいのが、予定どおり職場復帰できるかどうかです。
保育所等への入所を希望していても、入所できず、育児休業を延長する場合があります。
そのため、復職予定日の直前になって初めて確認するのではなく、保育所等の入所結果が分かる時期を確認し、早めに本人と連絡を取っておきましょう。
保育所等に入所できなかったことを理由に育児休業給付の支給対象期間を延長する場合には、原則として、「育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書」「保育所等の利用申込書の写し」「保育所等を利用できない旨の通知(入所保留通知書・入所不承諾通知書など)」が必要です。
また、2025年4月からは、単に保育所等に入れなかっただけではなく、速やかな職場復帰のために保育所等の利用を申し込んでいたことも確認されます。
厚生労働省|育児休業給付金の支給対象期間延長手続き
復職後の働き方を確認する
育児休業の終了時期が近づいたら、職場復帰に向けた準備を進めます。
できれば復職直前になって初めて話をするのではなく、一定の余裕をもって本人と確認することをおすすめします。
確認しておきたいのは、次のような事項です。
- 復職予定日
- 復職後の勤務時間
- 育児短時間勤務を利用するか
- 残業免除等を希望するか
- 保育園への送迎等による勤務時間の希望
- 配属や担当業務について配慮が必要か
育児休業から復帰したからといって、すぐに休業前とまったく同じ働き方ができるとは限りません。
保育園への送迎や子どもの体調不良などを考慮しながら、本人の希望を確認していきます。
復職前に面談の機会を設けておくと、本人の希望と会社側の認識のずれを減らし、復職後のミスマッチを防ぎやすくなります。
また、育児短時間勤務などにより復職後の給与が下がった場合には、社会保険の標準報酬月額の変更や、将来の年金額が不利にならないための特例など、必要な社会保険の手続きがないかも確認しておきましょう。
日本年金機構|育児休業等終了後に受け取る報酬に変動があったとき
日本年金機構|養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置
STEP8 職場復帰後も育児との両立支援は続く
育児との両立を支える制度に対応する
職場復帰をしたら、会社の対応が終わるわけではありません。
子育てをしながら働く従業員には、仕事と育児を両立するためのさまざまな制度があります。
例えば、次のような制度です。
- 育児短時間勤務
- 所定外労働の制限(残業免除)
- 時間外労働の制限
- 深夜業の制限
- 子の看護等休暇
それぞれ対象となる子の年齢や利用条件が異なるため、人事担当者は、「どの制度を、いつまで利用できるのか」を整理しておくことが大切です。
また、会社独自にフレックスタイム制度やテレワーク制度などを設けている場合には、それらも活用しながら、育児と仕事を両立しやすい働き方を本人と一緒に考えていくことが望まれます。
子が3歳になる前にも本人の意向を聴く
妊娠・出産等の申出時に本人の意向を確認していても、それで終わりではありません。
2025年10月からは、労働者の子が3歳になるまでの適切な時期にも、子や各家庭の事情に応じた仕事と育児の両立に関する事項について、本人の意向を個別に聴取することが会社に義務付けられています。
また、この時期には、3歳から小学校就学前まで利用できる「柔軟な働き方を実現するための措置」について、会社が選択した制度の内容を個別に周知し、利用する意向があるか確認することも必要です。
厚生労働省は、子が3歳になる前の適切な時期に、この個別周知・意向確認を行うよう定めています。
確認する内容としては、例えば次のような事項があります。
- 勤務時間帯(始業・終業時刻)
- 勤務地
- 両立支援制度等を利用したい期間
- 業務量や労働条件など、仕事と育児を両立するための就業条件
つまり、子が3歳になる前には、「どのように働きたいかを聴く」ことと、「会社が用意した柔軟な働き方の制度を知らせ、利用意向を確認する」ことの両方が必要になります。
妊娠・出産時に聞いた希望が、そのまま数年後まで続くとは限りません。
子どもの成長や保育園の状況、家庭環境などによって希望する働き方も変わるため、改めて本人の希望を確認することが重要です。
3歳以降の「柔軟な働き方」にも対応する
さらに2025年10月からは、3歳から小学校就学前までの子を養育する労働者について、会社は次の5つの中から2つ以上の「柔軟な働き方を実現するための措置」を用意することが義務付けられています。
- 始業時刻等の変更
- テレワーク等
- 保育施設の設置運営等
- 養育両立支援休暇
- 短時間勤務制度
対象となる労働者は、会社が用意した措置の中から1つを選択して利用することができます。
このように、会社の育児支援は「育児休業から復帰したら終了」ではありません。
復職前に働き方を確認し、復職後も利用できる制度に対応し、さらに子が3歳になる前には改めて本人の意向を確認するなど、子どもの成長や家庭の状況に応じて継続して支援していくことが求められます。
各制度の対象者や利用できる期間などの詳細については、厚生労働省の以下のサイトで確認できます。
厚生労働省|育児・介護休業法のあらまし
厚生労働省|育児休業制度特設サイト
「もらえるお金」は3つ+αある
ここまで紹介してきた産休・育休の期間中、社員には次のような経済的な支援があります。
- 出産育児一時金:出産費用の補填として支給される一時金
- 出産手当金:産休中の所得補償として、健康保険から支給される給付
- 育児休業等給付:育児休業や育児のための短時間勤務をした場合などに、雇用保険から支給される給付
- 社会保険料の免除:一定の要件を満たす産休・育休期間について、健康保険料・厚生年金保険料が、本人負担分・会社負担分ともに免除される制度
「休業中は無給になるのでは」と不安を感じる社員は多いですが、実際にはこうした複数の支援制度によって、収入面がある程度カバーされる仕組みになっています。
たとえば育児休業給付金は、原則として休業開始から180日までは休業開始時賃金の67%、181日目以降は50%が支給されます。
さらに2025年4月からは、一定の要件を満たす場合、出生後休業支援給付金が13%上乗せされ、最大28日間は給付率が合計80%となります。給付が非課税で、育児休業中の社会保険料も免除されることから、厚生労働省では「手取り10割相当」としています。
厚生労働省|出生後休業支援給付の簡易診断(要件確認)ツール
妊娠・出産・育児の手続きはチェックシートで管理しよう
ここまで見てきたように、従業員から妊娠の報告を受けてから職場復帰するまでには、多くの確認事項や手続きがあります。
しかも、これらは短期間にまとめて発生するわけではありません。妊娠の報告を受けてから職場復帰するまで1年以上にわたることもあり、その間に「どこまで手続きをしたのか」「次は何をするのか」「どの書類を提出したのか」が分からなくなってしまうこともあります。
特に従業員数の少ない会社では、妊娠・出産の手続きが毎年発生するとは限らず、「前回どうやって手続きをしたっけ?」となりがちです。
そのため、妊娠の申出を受けた段階で従業員ごとのチェックシートを作り、次の項目などを一元管理しておくことをおすすめします。
- 出産予定日
- 産前休業開始日
- 出産日
- 産後休業終了日
- 育児休業開始日
- 育児休業終了予定日
- 必要な申請・届出
- 申請日・提出日
- 復職予定日
まとめ|妊娠の申出から職場復帰まで一連の流れとして管理しよう
従業員から妊娠の報告を受けた場合、会社が対応するのは産休や育休の手続きだけではありません。
大きな流れとしては、「妊娠の申出 → 制度の個別周知・意向確認 → 妊娠中の勤務への配慮 → 産前休業 → 出産 → 産後休業 → 育児休業 → 職場復帰 → 復職後の仕事と育児の両立支援」までが一連の対応になります。
特に近年は育児・介護休業法の改正が続いており、会社には、単に休業を認めるだけでなく、従業員一人ひとりの仕事と育児の両立について意向を確認し、働き方に配慮していくことが求められています。
会社としては、一つひとつの制度を覚えるだけでなく、「今、この従業員はどの段階にいて、次に何をする必要があるのか」という視点で管理すると分かりやすくなります。
制度は法改正によって内容が更新されることもあるため、「以前聞いた話と違う」ということも起こり得ます。最新の情報を都度確認しながら、社員が安心して妊娠・出産・育児と向き合える環境を整えていくことが、会社にとっても長期的なメリットにつながります。
妊娠・出産・育児に関する社内制度の整備や、個別の制度運用についてのご相談は、久野事務所までお気軽にお問い合わせください。
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