社会保険加入の手続きを徹底解説|会社設立・採用時の流れと必要書類

1.社会保険の手続きとは(全体像)

社会保険の手続きは、「会社設立時」や「従業員の入退社時」など、一定のタイミングごとに必ず発生します。

主な流れは以下のとおりです。

  • 会社設立 → 新規適用届
  • 従業員の採用 → 資格取得届
  • 扶養の追加 → 被扶養者(異動)届
  • 退職 → 資格喪失届

 

2.事業所を社会保険に新規加入させる場合

従業員を社会保険に加入させるには、前提として事業所が社会保険に加入している必要があります。

これは、「社会保険の適用事業所として登録する手続き」です。

事業所の社会保険加入は「強制的に加入が必要になる場合」と「事業主や従業員の意向で加入する場合」によって手続きが異なります。

 

強制的に加入が必要になる場合(新規適用届)

社会保険の加入要件に該当した場合は、5日以内に新規適用届を年金機構へ提出します。

書式は、日本年金機構のホームページからダウンロード可能です。

新規適用の手続き|日本年金機構

法人と個人事業所の場合で添付する書類は異なります。

法人の場合:

  • 法人登記簿謄本
  • 法人番号指定通知書のコピー、または国税庁法人番号公表サイトのコピー

個人事業所の場合:

  • 事業主の世帯全員の住民票(コピー不可・個人番号の記載がないもの)

保険料を口座振替で納付する場合は、保険料口座振替納付(変更)申出書も必要です。

 

事業主や従業員の意向で加入する場合(任意適用申請書)

任意適用申請書を年金機構へ提出します。

書式は、日本年金機構のホームページからダウンロード可能です。

任意適用申請の手続き|日本年金機構

添付書類として次の書類を準備します。

  • 任意適用同意書(従業員の1/2以上の同意を得たことを証する書類)
  • 事業主世帯全員の住民票
  • 次の公租公課の領収書(原則1年分・コピー可)

所得税(国税)、事業税(道府県税)、市町村民税(市町村税)、国民年金保険料、国民健康保険料

任意適用申請書を提出する場合も、保険料の口座振替納付を希望する場合は、保険料口座振替納付(変更)申出書を合わせて提出します。

なお、法人の場合は強制的に加入が必要になるため、この手続きには該当しません。

 

3.従業員を社会保険に加入させる場合

従業員を社会保険に加入させる場合に必要な手続きは、従業員本人と被扶養者の2つです。

 

被保険者資格取得届

従業員本人を社会保険に加入させる際の届出書類です。

書式は、日本年金機構のホームページからダウンロード可能です。

従業員を採用したとき|日本年金機構

提出時に添付する書類はありませんが、個人番号の記入が必要になるため、従業員から個人番号がわかる資料をもらいましょう。

 

被扶養者(異動)届

従業員に、社会保険上の被扶養者に該当する親族がいる場合に必要です。

扶養認定のポイント

主な判断基準は以下のとおりです。

  • 年収要件(原則130万円未満など)
  • 同居・別居の状況
  • 生計維持関係

書式は、日本年金機構のホームページからダウンロード可能です。

家族を扶養にするとき|日本年金機構

なお、配偶者を被扶養者とするときは、国民年金第3号被保険者となるため、同一書式で手続きを行うこととなります。

添付書類として次の書類を準備します。

  • 被扶養者の個人番号(マイナンバー)、職業、年収などの情報

加入できる要件を従業員に説明し、必要書類を準備するよう案内しましょう。

 

4.従業員を社会保険に加入させる流れ

従業員を社会保険に加入させる場合、一般的には次の流れで手続きをおこないます。

  1. 従業員が加入対象か確認する
  2. 必要書類を従業員に依頼する
  3. 資格取得届・被扶養者(異動)届を提出する

 

A.従業員が加入対象か確認する

最初に、入社した従業員が社会保険の加入要件に該当するか確認します。

正社員は原則として、加入対象となります。

一方で、パート・アルバイトなど労働時間や出勤日数が少ない従業員については、労働条件に応じて加入の可否を判断する必要があります。

加入基準については、前回の記事で詳しく解説しています。

社会保険の加入基準を徹底解説|会社と従業員、扶養それぞれの判断ポイント

 

B.必要書類を従業員に依頼する

従業員が加入対象であることを確認したら、手続きに必要な書類の提出を依頼します。

資格取得届自体に添付書類は不要ですが、従業員の個人番号(マイナンバー)の記載が必要となるため、以下のいずれかの提出を求めます。

  • マイナンバーカードのコピー
  • 個人番号が記載された住民票

扶養家族がいる場合

従業員に扶養に入れる親族がいる場合は、被扶養者(異動)届に加えて、以下の書類が必要となる場合があります。

  • 続柄を確認できる書類(次のいずれか)
    • 被扶養者の戸籍謄(抄)本
    • 住民票の写し(被保険者が世帯主で、被扶養者と同一世帯である場合に限る。)

ただし、次のいずれにも該当するときは、続柄確認のための添付書類を不要とすることができます。

    • 被保険者と扶養認定を受ける方双方の個人番号が届書に記載されていること。
    • 事業主が続柄確認を行い、その旨を届書に記載していること
  • 収入要件確認のための書類

ただし、所得税法の規定による控除対象配偶者または扶養親族である旨を、事業主が届書に記載しているときは、省略は可能です。

  • (被保険者と別居している場合)仕送りの事実と仕送り額の確認のための書類
  • (内縁関係の場合)内縁関係の確認のための書類

扶養の収入要件

親族を社会保険上の扶養に入れる場合、原則として親族の年収が130万円未満でなければなりません。

なお、令和7年10月1日以降は、19歳以上23歳未満の親族についてのみ、年収要件が150万円未満に引き上げられています。

 

C.資格取得届・被扶養者(異動)届を提出する

必要な情報や書類が揃ったら、「資格取得届」および「被扶養者(異動)届」を作成し、所管の機関へ提出します。

提出先

提出先は、加入している保険の種類により異なります。

● 協会けんぽの場合
→ 年金事務所へ提出

● 健康保険組合の場合
→ 健康保険組合および年金事務所の双方へ提出

第3号被保険者の手続き

被扶養者が配偶者であり、20歳以上60歳未満の場合は、
「国民年金第3号被保険者関係届」も併せて年金事務所へ提出する必要があります。

 

5.退職・異動時の手続き

被保険者資格喪失届

従業員が退職した場合は、「資格喪失届」を提出します。

提出期限:退職日から5日以内

 

任意継続との関係

退職後も健康保険を継続できる「任意継続制度」があります。

任意継続制度とは、退職や労働時間の減少などにより健康保険の資格を喪失した方が、引き続き同じ保険者の健康保険に2年まで加入できる制度です。

任意継続の申請は原則として本人がおこないます。

会社としては、制度の概要を従業員に説明できるようにしておくことが重要です。

 

6.社会保険の加入手続き方法

社会保険の加入手続きには、主に「電子申請」と「紙での申請」の2つの方法があります。それぞれの特徴を解説します。

電子申請(オンライン申請)

社会保険の多くの手続きは、「e-Gov」を利用した電子申請が可能です。

e-Govとは、デジタル庁が運営する行政手続きのオンラインポータルサイトで、年金事務所への各種申請を24時間オンラインで行うことができます。

電子申請を活用することで、

  • 窓口へ行く手間が省ける
  • 郵送コストを削減できる
  • 手続きのスピードが向上する

といったメリットがあります。

現在は電子申請が主流となっており、導入をおすすめします。

電子申請(e-Gov)|日本年金機構

紙での申請(郵送または窓口持参)

電子申請を利用しない場合は、所定の様式を用いて紙で手続きを行うことも可能です。

郵送の場合は、事務センターまたは管轄の年金事務所へ送付します。
窓口へ提出する場合は、管轄の年金事務所へ持参します。

7.自社で行う社会保険手続き:よくある悩みと注意点(FAQ)

Q1. 社会保険の加入義務があるのは、どのような従業員ですか?

A1. 正社員だけでなく、週の所定労働時間および月の所定労働日数が正社員の4分の3以上である従業員は加入対象です。また、特定適用事業所(従業員数51人以上など)では、週20時間以上勤務などの条件を満たすパート・アルバイトも加入対象となるため、法改正による基準の変化に注意が必要です。

Q2. 従業員が入社した際、いつまでに手続きを終える必要がありますか?

A2. 健康保険・厚生年金は「採用から5日以内」に書類を提出しなければなりません。期限が非常に短いため、入社初日にマイナンバーなどの情報を漏れなく回収できる体制を整えておくことが重要です。

Q3. 自分で手続きをする際、どの窓口に提出すればいいですか?

A3. 内容によって異なります。健康保険・厚生年金は**「年金事務所(または健康保険組合)」、雇用保険は「ハローワーク」、労災保険は「労働基準監督署」**です。窓口が分散しているため、移動時間や郵送の手間、それぞれの管轄確認に時間がかかるのがセルフで行う際のデメリットです。

Q4. 書類に不備があった場合、どのようなリスクがありますか?

A4. 書類が返戻(差し戻し)され、再提出が必要になります。その間、健康保険証の発行が遅れて従業員が医療機関で10割負担を強いられたり、離職票の発行が遅れて元従業員が失業保険を受け取れなかったりといったトラブルに発展する恐れがあります。

Q5. 従業員が数名の小規模企業でも社労士に依頼できますか?

A5. はい、もちろん可能です。 少人数の企業様こそ、経営者や担当者が事務作業に追われる時間を削減するメリットが大きくなります。1名様からの手続き代行や、将来の成長を見据えた労務体制の構築もサポートいたします。

8.まとめ

社会保険の加入手続きは、
・会社設立時
・従業員の採用時
・退職時

などのタイミングで必ず発生します。

特に加入漏れは後から大きなリスクとなるため、正しい知識と運用が重要です。

関連記事

社会保険の加入基準を徹底解説|会社と従業員、扶養それぞれの判断ポイント

初めて人を雇う手続き6ステップ|必要な届出と書類【完全ガイド】

 

知多半島で社会保険の手続きや加入判断にお悩みの方は、久野事務所までお気軽にご相談ください。