産休・育休中にもらえるお金と申請実務 会社が知っておきたい出産手当金・育児休業等給付・社会保険料免除を解説

従業員から妊娠・出産の報告を受けたとき、会社側では休業制度への対応だけでなく、「どの給付を案内するか」「会社が作成する書類は何か」「本人や医師に何を依頼するか」「どこへ申請するか」まで整理しておく必要があります。

産休・育休中には、出産育児一時金、出産手当金、雇用保険の育児休業等給付、健康保険・厚生年金保険料の免除など複数の制度が関係します。

さらに復職後に時短勤務となった場合には、育児時短就業給付金や社会保険の標準報酬月額に関する特例もあります。

この記事では、経営者・人事担当者が従業員へ概要を説明でき、実際の申請事務まで進められるように、「何のための制度か」「誰が対象か」「いくらか」「誰が何をするか」「どこへ出すか」の順で整理します。

このシリーズの①全体編では、妊娠報告から復職までの流れを時系列で整理しました。

従業員の妊娠がわかったら会社は何をする? 妊娠から職場復帰までの手続きロードマップ

産休・育休そのものの対象者、取得期間、申出期限などは②制度編で解説しています。

産休・育休は何が違う? 会社で知っておきたい妊娠・出産・育児の制度をまるごと解説

まずは一覧|会社が押さえたい「お金」と申請先

最初に、妊娠・出産から育児休業、復職後までに会社が関係する主な経済的支援を整理します。

制度 主な対象時期 受給・適用される人 主な申請者・手続者 申請先
出産育児一時金 出産時 被保険者・被扶養者 本人または医療機関等 加入する健康保険
出産手当金 産休中 健康保険の被保険者本人 本人+会社+医師・助産師 加入する健康保険
産休中の社会保険料免除 産休中 健康保険・厚生年金の被保険者 会社 日本年金機構等
育児休業等給付 産後パパ育休・育休・時短勤務 雇用保険の被保険者 原則として会社を通じて手続 事業所管轄のハローワーク
育休中の社会保険料免除 育休中 健康保険・厚生年金の被保険者 会社 日本年金機構等
復職後の社会保険特例 復職・時短勤務後 一定の被保険者 本人の申出を受け会社が届出 日本年金機構等

会社側で特に重要なのは、出産育児一時金のように会社が原則申請しない制度と、社会保険料免除のように会社が届出を行う制度を区別することです。

出産育児一時金|出産費用を支える健康保険の一時金

制度の目的と支給額

出産育児一時金は、健康保険の被保険者または被扶養者が妊娠4か月(85日)以上で出産したときに、出産費用の負担を軽減するため支給される一時金です。

原則として1児につき50万円で、産科医療補償制度の対象外となる出産では48万8,000円となる場合があります。多胎の場合は子どもの人数分が支給されます。

多くの場合は「直接支払制度」で医療機関が請求する

多くの医療機関では「直接支払制度」が利用されます。

本人が医療機関等と代理契約を結ぶと、医療機関等が本人に代わって健康保険へ請求し、一時金を直接受け取ります。

会社が一時金を立て替えたり、通常の給与計算に組み込んだりする制度ではありません。

出産費用が一時金の額を下回った場合は、本人が加入する健康保険へ差額を請求できます。

直接支払制度を利用しない場合は、本人が出産費用を支払った後、出産育児一時金支給申請書等を提出して受給します。

退職後6か月以内の出産でも対象になる場合がある

被保険者本人が退職した後に出産する場合でも、退職日までに継続して1年以上の被保険者期間があり、資格喪失後6か月以内に出産するなどの要件を満たせば、以前加入していた健康保険から出産育児一時金を受けられる場合があります。

同じ出産について複数の保険者から重複して受給することはできません。

【会社の実務】

  • 会社が出産育児一時金を申請するケースは通常ありません。
  • 従業員から相談があったときは、加入する健康保険、直接支払制度の利用有無、差額申請の有無を案内します。
  • 退職予定者については、資格喪失後給付の可能性があるため、退職日・被保険者期間・出産予定時期を確認するとよいでしょう。

参考:協会けんぽ|出産育児一時金

出産手当金|産休中の所得を補う健康保険の給付

誰が対象になる?

出産手当金は、健康保険の被保険者本人が出産のために会社を休み、その期間について給与の支払いを受けられない場合などに支給されます。

被扶養者として健康保険に加入している方は、原則として対象ではありません。

支給期間と金額の基本

支給対象となるのは、原則として出産日(出産が予定日より後の場合は出産予定日)以前42日、多胎妊娠の場合は98日から、出産日の翌日以後56日までの範囲で会社を休んだ期間です。

1日当たりの支給額は、原則として「支給開始日以前12か月間の各標準報酬月額を平均した額 ÷ 30 × 3分の2」で計算します。

加入期間が12か月に満たない場合は別の計算方法があります。

有給休暇や会社独自の手当がある場合は差額調整

産休中に年次有給休暇を取得したり、会社独自の手当や給与等が支給されたりしていても、直ちに出産手当金の対象外になるわけではありません。

出産手当金より少ない給与等が支払われた場合は、その差額が支給されます。人事担当者は「産休中に給与が1円でも出たら手当金はゼロ」と誤って案内しないよう注意が必要です。

申請書は「本人・会社・医師等」の3者で完成させる

協会けんぽの出産手当金支給申請書は、本人だけで完結する書類ではありません。

本人の記入・入力に加えて、事業主による勤務・賃金支払状況の証明、医師または助産師による出産予定日・出産日等の証明が必要です。

  • 本人:被保険者情報、申請期間、振込先などを記入・入力する。
  • 会社:事業主記入用で、休んだ期間、出勤状況、給与等の支払状況を証明する。
  • 医師・助産師:医師・助産師記入用で、出産予定日・出産日などを証明する。

医師・助産師への証明依頼はどうする?

紙申請では、本人が「医師・助産師記入用」のページを産婦人科等へ渡し、証明を受けるのが一般的です。

1回目の申請が出産後で、その証明により出産日等を確認できた場合は、2回目以降の申請で医師・助産師の証明を省略できる場合があります。

一方、事業主証明は申請ごとに必要です。

申請先と電子申請

協会けんぽ加入者の場合、紙申請は加入する協会けんぽ都道府県支部へ提出します。

健康保険組合に加入している場合は各組合の案内に従います。

協会けんぽでは電子申請サービスも提供されており、加入者本人や社会保険労務士がオンラインで申請できます。

参考:協会けんぽ|電子申請サービスについて

退職後も継続して受けられる場合がある

退職日までに継続して1年以上の被保険者期間があり、退職日時点で出産手当金を受けている、または受けられる状態である場合は、資格喪失後も継続して受給できる場合があります。

特に注意したいのは、退職日に出勤すると資格喪失後の継続給付を受けられない点です。退職予定者への案内では、退職日の勤務状況まで確認する必要があります。

【会社の実務】

  • 産休期間と給与支払状況を正確に確認し、事業主証明を作成する。
  • 本人へ医師・助産師記入用の証明が必要であることを案内する。
  • 申請を分けて行う場合は、各申請期間の勤務・給与証明を準備する。
  • 退職予定者の場合は、資格喪失後の継続給付要件と退職日の出勤有無を確認する。

参考:協会けんぽ|出産手当金

産休中の社会保険料免除|会社が届出を行う

産前産後休業中は、会社が所定の申出を行うことで、健康保険料・厚生年金保険料の本人負担分と会社負担分が免除されます。

免除期間についても、将来の厚生年金額の計算上は保険料を納付した期間として取り扱われます。

被保険者から産前産後休業取得の申出を受けた会社は、「健康保険・厚生年金保険 産前産後休業取得者申出書/変更(終了)届」を日本年金機構へ提出します。

出産日が予定日と異なるなど、休業期間に変更が生じた場合は変更・終了の手続きも確認します。

【会社のチェック】

  • 出産予定日・産休開始日を確認する。
  • 産前産後休業取得者申出書を提出する。
  • 実際の出産日を確認し、免除期間に変更があれば必要な届出を行う。

参考:日本年金機構|産前産後休業を取得し、保険料の免除を受けようとするとき

育児休業等給付|雇用保険の4つの給付を整理する

雇用保険では、育児のために休業または時短勤務をした場合に受けられる給付を総称して「育児休業等給付」といいます。次の4つです。

給付金名 支給条件 支給額
育児休業給付金 1歳未満の子どもを育てるために育児休業を取得 休業前の給与の67%
出生時育児休業給付金 子どもの出生後8週間以内に育児休業を取得
出生後休業支援給付金 両親とも育児休業を取得 上記に13%上乗せ
育児時短就業給付金 2歳未満の子どもを育てるために時短勤務を実施 時短勤務中の給与の10%

※支給条件と支給額には詳細な条件があります。

出生後休業支援給付金と育児時短就業給付金は2025年4月に新設されました。

会社側では、単に「育休給付」と一括りにせず、従業員の休業形態と時期に応じてどの給付に該当するか整理する必要があります。

参考:厚生労働省|育児休業等給付について

育児休業給付金|通常の育休中の所得を補う

支給要件の基本

雇用保険の被保険者が、原則1歳未満の子を養育するために育児休業を取得し、一定の要件を満たした場合に支給されます。

代表的な要件は、育児休業開始日前2年間に賃金支払基礎日数11日以上(ない場合は就業時間80時間以上)の月が12か月以上あることなどです。

給付率は最初の180日まで67%、181日目以降50%

支給額は、原則として「休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%」で、育児休業開始から181日目以降は50%となります。

支給上限額や支給日数等により実際の額は異なります。

休業中に働いた場合は「日数・時間」と「賃金」を確認

育児休業給付金では、支給単位期間中の就業日数が10日以下であること、10日を超える場合は就業時間が80時間以下であることが支給要件の一つです。

在職中の会社以外での就業も日数・時間に含まれます。副業等をしている従業員については、会社が把握できる範囲で本人に確認を促す必要があります。

また、休業期間中に賃金が支払われた場合、休業開始時賃金日額×支給日数の80%以上の賃金が支払われている支給単位期間は給付額が0円となり、それ未満でも賃金額に応じて減額される場合があります。

申請実務は会社で管理する

申請先は、在職する事業所を管轄するハローワークです。

実務では会社が、休業開始時賃金月額証明書、受給資格確認票・支給申請書、賃金台帳、出勤簿・タイムカード、育児休業申出書等を整え、申請するケースが一般的です。

延長時は2025年4月改正後の書類確認を早めに

保育所等に入れないことを理由に育児休業給付の支給対象期間を延長する場合、2025年4月以降は、速やかな職場復帰のために保育所等を利用する意思があったことも確認されます。

保育所等の利用申込書の写し、利用できない旨の通知、延長事由認定申告書等が必要になるため、1歳直前に慌てるのではなく、会社から早めに本人へ案内しておくとよいでしょう。

【会社の実務】

  • 育休開始日と支給単位期間を管理する。
  • 各支給単位期間の出勤・就業時間と賃金支払状況を確認する。
  • 副業等がある場合は、他社での就業も支給要件に影響することを本人へ案内する。
  • 延長見込みがある場合は、保育所申込書の写し等を早めに保管するよう案内する。

出生時育児休業給付金|産後パパ育休中の給付

産後パパ育休(出生時育児休業)を取得し、支給要件を満たす雇用保険の被保険者には、出生時育児休業給付金が支給されます。

支給額は原則として「休業開始時賃金日額 × 休業期間の日数(上限28日)× 67%」です。

産後パパ育休は制度上、一定の手続きをした場合に休業中の就業が認められることがあります。

一方、給付側にも就業日数・時間の要件があり、28日間の休業なら最大10日、10日を超える場合は80時間以下が基準となります。

休業期間が28日より短い場合は比例して上限が短くなります。会社は労務管理上の就業可能日数と、雇用保険給付上の支給要件の両方を確認する必要があります。

2026年8月から休業中の賃金の申告方法が変更

2026年8月1日以降に開始する出生時育児休業については、申請時に申告する賃金の取扱いが見直されました。

従来は「出生時育児休業期間を対象として支払われた賃金」を申告していましたが、現在は原則として「出生時育児休業期間中に支払日のある賃金」を申告します。

会社は、休業日だけでなく給与の支払日も確認して申請する必要があります。

会社の実務】

  • 産後パパ育休の申出期間と実際の休業日を確認する。
  • 休業中に就業した場合は、日数・時間・支払賃金を正確に記録する。
  • 出生後休業支援給付金の対象となる可能性もあるため、同時に要件確認を行う。
  • 2026年8月1日以降に開始する出生時育児休業は、休業期間中に「支払日のある賃金」を確認して申告する。

出生後休業支援給付金|最大28日間、13%上乗せ

出生後休業支援給付金は2025年4月に新設されました。

子の出生直後の一定期間に、原則として本人と配偶者がそれぞれ通算14日以上の育児休業等を取得するなど一定の要件を満たすと、出生時育児休業給付金または育児休業給付金に13%相当額が上乗せされ、最大28日間について合計の給付率が80%となります。

「手取り10割相当」は額面100%ではない

厚生労働省は、育児休業等給付が非課税であり、一定の要件で社会保険料が免除され、給与が支払われない場合は雇用保険料負担もないことを踏まえて、給付率80%を「手取り10割相当」と説明しています。休業前の額面給与そのものを100%補償する制度ではありません。

配偶者要件には例外がある

一人親の場合、配偶者が雇用される労働者でない場合、配偶者が産後休業中である場合など、配偶者の育児休業取得を要件としないケースがあります。

会社が「夫婦とも必ず14日以上取らないと対象外」と一律に案内すると誤りになるため、配偶者の状況を確認して判断することが重要です。

配偶者関係の確認書類が実務のポイント

出生後休業支援給付金では、配偶者の雇用保険被保険者番号、育休取得状況、配偶者要件の例外に該当することを確認する書類などが必要になる場合があります。

2026年8月1日からは、母親が申請する場合についても、一定の場合に配偶者の氏名・生年月日が記載された母子健康手帳の出生済証明ページの写しを配偶者の確認書類として提出できるようになりました。

また、同じ子についてすでに育児休業給付を受給しており配偶者関係が確認されている場合には、改めて母子健康手帳の写し等を提出する必要がない取扱いもあります。

厚生労働省は簡易診断ツールを公開しているため、会社が本人と一緒に必要書類を確認する際にも利用できます。

参考:厚生労働省|出生後休業支援給付の簡易診断(要件確認)

育児時短就業給付金|2歳未満の子の時短勤務を支援

育児時短就業給付金は、2025年4月に新設された雇用保険の給付です。

2歳未満の子を養育するために所定労働時間を短縮して働き、一定の要件を満たした場合に、時短勤務による賃金の低下を補うために支給されます。

支給要件の基本

主な受給資格として、次のいずれかを満たす必要があります。

  • 育児休業給付の対象となる育児休業から引き続いて育児時短就業を開始したこと
  • 育児時短就業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が通算12か月以上あること(11日以上の月がない場合は、就業時間数80時間以上の月で判定)

さらに、給付を受ける各月について、月の初日から末日まで雇用保険の被保険者であること、育児時短就業をしている期間があること、その月に育児休業給付や介護休業給付を受給していないことなどの要件があります。

給付額は原則として時短勤務中の賃金の10%

育児時短就業給付金の支給額は、原則として育児時短就業中に支払われた賃金額の10%です。

ただし、時短勤務後の賃金が時短勤務開始前の賃金に近い場合は給付率が調整されます。

具体的には、時短勤務中の賃金が時短勤務開始時賃金月額の90%を超える場合には給付率が10%から段階的に低くなり、賃金と給付金の合計が時短勤務開始前の賃金を超えないよう調整されます。支給額には支給限度額・最低限度額があり、実際の支給額が10%にならない場合や支給されない場合もあります。

「3歳未満の短時間勤務制度」と対象年齢が違う点に注意

育児・介護休業法では、会社に対して原則として3歳未満の子を養育する労働者のための短時間勤務制度を設けることが義務付けられています。

一方、雇用保険の育児時短就業給付金の対象となるのは2歳未満の子を養育するために時短勤務をする場合です。

会社が時短勤務制度を案内するときは、労働法上の制度を利用できる期間と、雇用保険から給付金を受けられる期間は異なることを説明しておくとよいでしょう。

申請実務は会社で時短開始前後の賃金を確認する

育児時短就業給付金を申請する際には、時短勤務を開始した時期や所定労働時間、時短勤務中に支払った賃金などを確認する必要があります。

会社側では、育児短時間勤務申出書、雇用契約書・労働条件通知書、賃金台帳、出勤簿・タイムカードなどから、時短勤務前と時短勤務後の労働条件・賃金を確認できるようにしておくことが重要です。

2026年8月から時短勤務の確認方法が見直された

2026年8月1日から、「育児時短就業期間等に係る証明書」の様式が改訂され、育児時短就業の開始日や週所定労働時間を確認する資料として使用できるようになりました。

また、フレックスタイム制、変形労働時間制、シフト制について、週所定労働時間の計算方法も整理されています。

さらに、育児休業給付の対象となった育児休業から引き続いて同じ子について初めて育児時短就業を開始し、一定の要件を満たす場合には、賃金証明書の一部について育児休業開始前の賃金支払状況の記載を省略できる取扱いも設けられています。

育児休業中の社会保険料免除|月額と賞与で要件が違う

月額保険料の免除

育児休業等期間中は、会社からの申出により、健康保険料・厚生年金保険料が本人負担分・会社負担分ともに免除されます。

原則として、育児休業等開始日の属する月から、終了日の翌日が属する月の前月までが免除期間です。

開始日と終了日の翌日が同じ月にある短期間の育児休業等でも、その月に14日以上取得していれば月額保険料が免除されます。

ここでいう14日ルールは「同一月内の短期育休」の特例であり、単に休業が月をまたいで14日以上あればよいという意味ではありません。

賞与保険料の免除は「1か月を超える育休」がポイント

賞与にかかる社会保険料は、月額保険料とは要件が異なります。賞与月の末日を含む連続した1か月を超える育児休業等を取得した場合に限って免除となります。

したがって、短期の産後パパ育休で月額保険料が免除されても、同じ月の賞与保険料まで自動的に免除されるとは限りません。

【会社の実務】

  • 育休開始日・終了予定日だけでなく、実際の終了日を管理する。
  • 同一月内の短期育休は14日以上か確認する。
  • 賞与支給月は、月末を含む連続1か月超の育児休業等かを別途確認する。
  • 「月額保険料の免除」と「賞与保険料の免除」を同じ基準で判断しない。

参考:日本年金機構|育児休業中の厚生年金保険の保険料はどうなるのですか

復職後に給与が下がった場合の社会保険手続き

育休から復職した後、短時間勤務などによって給与が下がる場合があります。

このとき会社が確認したいのが、「育児休業等終了時報酬月額変更届」と「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」です。名称は似ていますが目的が異なります。

育児休業等終了時報酬月額変更届|現在の保険料を見直す

育児休業等終了日に3歳未満の子を養育している被保険者について、復職後の報酬が下がった場合、通常の随時改定に該当しなくても、本人の申出に基づき標準報酬月額を改定できる制度です。

育児休業等終了日の翌日が属する月以後3か月の報酬平均を基に、原則4か月目から改定します。従前と改定後に1等級以上の差があること等の要件があります。

養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置|将来の年金額を守る

3歳未満の子を養育する期間中に標準報酬月額が低下した場合、本人の申出により、将来の厚生年金額を計算する際には養育開始前の高い標準報酬月額を用いることができる制度です。

保険料そのものは実際の低い標準報酬月額で計算されるため、「現在の保険料負担は低く、将来の年金額計算では従前の標準報酬を使う」という効果があります。

制度 主な目的 会社の実務
育児休業等終了時報酬月額変更届 復職後の実際の報酬に合わせて標準報酬月額を下げる 本人の申出を受け、報酬3か月分を確認して届出
養育期間標準報酬月額特例申出 報酬低下が将来の厚生年金額に影響しないようにする 本人の申出を受け、身分関係等の確認書類とともに届出

この2制度は併用できるケースがあり、復職後の時短勤務者にはセットで案内すると実務的です。

参考:日本年金機構|従業員の報酬月額の届出を行うときの手続き

参考:日本年金機構|養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置

産休・育休中の税金・雇用保険料|給与計算で迷いやすい点

給付金は原則非課税

出産手当金や育児休業等給付は、原則として所得税の課税対象ではありません。

給与として会社が支給するものではないため、会社の給与計算で源泉所得税を控除して本人へ渡す仕組みでもありません。

給与がなければ雇用保険料も通常は発生しない

雇用保険料は賃金に対して計算します。育休中に会社から賃金の支払いがなければ、その賃金に対する雇用保険料の本人負担もありません。

育休中に給与・手当等を支給する場合は、その支給内容が賃金に当たるかを通常の給与計算と同様に確認します。

住民税は前年所得に対して課税されるため休業中も残る

住民税は前年の所得を基に課税されるため、産休・育休に入って当年の給与がなくなっても納付義務が残る場合があります。

給与から特別徴収できなくなる場合の取扱いは、退職ではなく休業であることも踏まえ、各市区町村の案内に従って処理します。

従業員から「育休中なのに住民税の支払いがある」と質問されることが多いため、会社から事前に説明しておくとよいでしょう。

【時系列】会社が行う申請実務を整理

時期 会社が確認すること 主な手続き 主な申請先
妊娠・産休前 出産予定日、産休開始日、加入保険 産休中の社会保険料免除の準備 日本年金機構等
出産時 実際の出産日、出産育児一時金の利用方法 一時金は原則本人・医療機関。会社は制度案内 加入する健康保険
産休中 休業日・給与支払状況 出産手当金の事業主証明 協会けんぽ・健康保険組合
育休開始 育休期間、雇用保険加入歴、賃金 育児休業給付・社会保険料免除 ハローワーク/日本年金機構等
産後パパ育休 休業日、就業日・時間、賃金 出生時育児休業給付・出生後休業支援給付 ハローワーク
育休延長 保育所申込状況・書類 給付延長手続き ハローワーク
復職・時短 所定労働時間、賃金低下 育児時短就業給付、終了時月変、養育特例 ハローワーク/日本年金機構等

まとめ|会社は「制度の案内」から「申請実務」まで整理しておこう

産休・育休に関するお金の制度は、従業員本人が受け取る給付だけでなく、会社が証明・申請する手続き、本人や医師等に依頼する書類、社会保険料免除、復職後の標準報酬の特例まで広がっています。

特に会社側では、出産手当金の事業主証明、育児休業等給付の支給単位期間ごとの賃金・就業実績、社会保険料免除の期間判定、復職後の時短勤務に伴う届出を一連の流れとして管理することが重要です。

従業員から妊娠・出産の申出があってから慌てて制度を調べるのではなく、「誰が担当するか」「本人へ何を渡すか」「会社が何を証明するか」「どこへ提出するか」をあらかじめ整理しておくと、申請漏れや説明ミスを防ぎやすくなります。

※本稿は2026年9月時点の厚生労働省等の公表情報をもとに作成しています。給付額には上限・下限等があり、個別の支給可否は各保険者・ハローワーク等が判断します。実際の申請時は最新の様式・取扱いをご確認ください。

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