産休・育休は何が違う? 会社で知っておきたい妊娠・出産・育児の制度をまるごと解説

産休は、出産する女性を対象とした労働基準法上の休業です。

一方、育児休業は男女ともに取得でき、産後パパ育休は出生後8週間以内に通算28日まで取得できます。

会社は休業を認めるだけでなく、制度の個別周知、取得意向の確認、社会保険・雇用保険の手続き、復職後の両立支援まで行う必要があります。

会社で従業員の妊娠・出産・育児に対応するとき、

  • 「産休と育休は何が違うのか」
  • 「男性はいつから休めるのか」
  • 「復職後に時短勤務や残業免除を使えるのはいつまでか」

など、制度の多さに戸惑うことがあります。

妊娠・出産・育児に関する制度は、労働基準法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法など複数の法律にまたがっています。

さらに2025年には、子の看護等休暇の拡充、残業免除の対象拡大、3歳以降の柔軟な働き方を実現するための措置、個別の意向聴取・配慮などの改正も施行されました。

このシリーズの①全体編では、妊娠報告から復職までの流れを時系列で整理しました。

従業員の妊娠がわかったら会社は何をする? 妊娠から職場復帰までの手続きロードマップ

③お金編では、産休・育休中にもらえるお金と、会社が行う申請実務を解説しています。

産休・育休中にもらえるお金と申請実務 会社が知っておきたい出産手当金・育児休業等給付・社会保険料免除を解説

今回の②制度編では、視点を切り替えて、「どの制度を、誰が、いつまで使えるのか」を中心に、2025年改正育児・介護休業法の内容も含めて解説します。

経営者・人事担当者はもちろん、実際に制度を利用する一般の従業員にとっても、自分に関係する制度を見つけやすい構成にしています。

まずは産休・育休・産後パパ育休の違いを一覧で確認

「産休」と「育休」は同じ制度ではありません。

産休は出産する女性の母体を保護するための制度で、労働基準法に定められています。

一方、育児休業産後パパ育休は、子を養育する労働者の仕事と育児の両立を支えるため、育児・介護休業法に定められています。

制度 対象者 利用できる時期 期間 主なポイント
産前休業 出産する女性 出産予定日の6週間前から(多胎妊娠は14週間前) 出産まで 本人の請求により取得
産後休業 出産した女性 出産日の翌日から 原則8週間 会社は原則就業させられない
育児休業 男女 原則、子が1歳になるまで 一定の場合は最長2歳まで 男女とも取得可能・分割取得可能
産後パパ育休 産後休業をしていない労働者(主に父親等) 出生後8週間以内 通算28日まで 通常の育休とは別枠、2回まで分割可能

ここで押さえておきたいのは、産休は労働基準法、育休・産後パパ育休は育児・介護休業法という、根拠となる法律自体が異なる別の制度だという点です。

似たような場面で使われる言葉ですが、対象者や性質が異なることを踏まえて、それぞれ見ていきましょう。

産前産後休業(産休)とは

産前休業は出産予定日の6週間前から

産前休業は、出産予定日の6週間前から、女性労働者が会社に請求した場合に取得できます。双子や三つ子などの多胎妊娠の場合は、出産予定日の14週間前から取得できます。

産前休業は、本人が請求して初めて取得する制度です。

そのため、出産予定日の6週間前になったからといって、会社が一律に休ませなければならないわけではありません。

ただし、本人から請求があった場合には、会社は就業させることができません。

また、出産予定日より実際の出産日が遅れた場合は、予定日から実際の出産日までの期間も産前休業に含まれるため、結果として産前休業が6週間を超えることがあります。

【実務では】

  • 従業員は、出産予定日と産前休業を開始したい日を会社へ伝えます。
  • 会社は休業開始日を確認し、業務の引継ぎや産前産後休業中の社会保険料免除などの手続きを準備します。
  • 産前休業に入る前に年次有給休暇を取得したいという申出が出ることもあるため、引継ぎには余裕を持っておくとよいでしょう。

産後休業は出産翌日から8週間

産後休業は、出産日の翌日から8週間です。

産前休業と違い、本人の請求がなくても、会社は原則として女性を就業させることができません

特に出産後6週間については、本人が「働きたい」と希望しても就業させることはできません。

ただし、産後6週間を経過した後は、本人が請求し、医師が支障がないと認めた業務に限って就業させることができます。

パート・アルバイト・有期契約労働者も対象

産前産後休業は正社員だけの制度ではありません。

労働基準法上の労働者であれば、パート、アルバイト、有期契約労働者など雇用形態を問わず対象になります。

会社側は「非正規だから産休はない」と判断しないよう注意が必要です。

妊娠中に利用できる母性健康管理・母性保護の制度

妊娠した従業員が利用できる制度は、産休だけではありません。

産休に入るまでの期間にも、母体を守りながら働くための制度があります。

妊婦健診を受けるための時間を確保する

男女雇用機会均等法では、会社は妊娠中または出産後の女性労働者が保健指導や健康診査を受けるために必要な時間を確保できるようにしなければならないと定めています。

妊娠23週までは4週間に1回、24週から35週までは2週間に1回、36週以後は1週間に1回が基本的な目安です。医師等から別の指示がある場合は、その指示に従います。

なお、健診のために確保した時間を有給とするか無給とするかは、法律で一律に決められているわけではなく、会社の就業規則等によります。

医師等の指導があった場合は勤務上の措置が必要

妊娠中や出産後の女性が健康診査等を受け、医師等から通勤緩和、休憩、勤務時間の短縮、作業の制限、休業などの指導を受けた場合、会社はその指導事項を守ることができるよう必要な措置を講じなければなりません。

医師等から通勤緩和、休憩、勤務時間の短縮などの指導を受けた場合は、その内容を会社へ伝えます。

その際に利用できるのが「母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)」です。

医師等に指導内容を記入してもらい、従業員が会社へ提出して必要な措置を申し出ます。会社はカードの記載内容に応じて適切な措置を講じます。

なお、母健連絡カードの提出がなければ措置を受けられないわけではありません。

本人からの申出などにより医師等の指導内容が明確であれば、会社は必要な措置を講じる必要があります。

軽易業務への転換や残業・深夜業の制限もある

労働基準法にも母性保護の規定があります。

妊娠中の女性から請求があった場合は他の軽易な業務へ転換させる必要があり、妊産婦から請求があった場合には、時間外労働、休日労働、深夜業をさせることができません

変形労働時間制を採用している場合にも、請求があれば1日・1週間の法定労働時間を超えて労働させることはできません。

産休中の経済的支援

健康保険の被保険者本人が出産のために会社を休み、その期間について給与の支払いを受けられない場合は、原則として出産予定日前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産日の翌日以後56日まで、1日につき標準報酬月額を基礎として算出した額の3分の2相当額の出産手当金が支給されます。出産予定日より遅れて出産した場合は、その遅れた期間も支給対象となります。

また、産前産後休業中は、会社が所定の手続きを行うことで、健康保険・厚生年金保険料の本人負担分・会社負担分が免除されます。免除期間についても、将来の厚生年金額の計算上は保険料を納付したものとして扱われます。

参考:厚生労働省|働く女性の母性健康管理措置、母性保護規定について

参考:厚生労働省|妊娠が分かったら(母性健康管理)

参考:厚生労働省|母性健康管理指導事項連絡カード

育児休業とは

原則として子が1歳になるまで取得できる

育児休業は、原則として1歳未満の子を養育するために取得できる休業です。

産前産後休業と違い、男性・女性のどちらも利用できます。

女性の場合は、産後休業が終了した後に育児休業へ移行するケースが多く、男性は配偶者の出産後から育児休業を取得することができます。

2022年10月からは、通常の育児休業についても子が1歳になるまでの間に2回まで分割して取得できるようになりました。

家庭の状況や配偶者の復職時期などに合わせて取得方法を組み立てやすくなっています。

パート・有期契約労働者も対象になる

育児休業も正社員だけの制度ではありません。有期契約労働者については、申出時点で、子が1歳6か月になるまでに労働契約が終了することが明らかでないことが要件となります。

2022年4月の改正で、有期雇用労働者について法律上の「継続雇用1年以上」という取得要件は撤廃されました。ただし、会社が労使協定を締結している場合には、継続雇用1年未満の労働者などを対象外とできる場合があります。

労使協定により対象外にできる労働者

会社が労使協定を締結している場合には、一定の労働者について育児休業の申出を拒むことができます。

代表的なのは、継続雇用1年未満の労働者や、1週間の所定労働日数が2日以下の労働者などです。

「パートだから対象外」「入社して間もないから必ず対象外」というわけではなく、法律上の要件と、自社で労使協定を締結しているかの両方を確認することが大切です。

育児休業は原則1か月前までに会社へ申し出る

育児休業を希望どおりの日から開始するためには、原則として休業開始予定日の1か月前までに、書面等で会社へ申し出ます。

1歳以降の育児休業(1歳6か月まで・2歳までの延長)については、原則として休業開始予定日の2週間前までです。

会社に育児休業申出書などの社内様式がある場合は、その様式を使用します。

育休中の経済的支援

原則として1歳に満たない子を養育する雇用保険の被保険者で、一定の要件を満たす方は、育児休業期間中に休業開始時賃金日額の67%相当額(支給日数が181日目以降は50%)の育児休業給付金が支給されます。

なお、子の出生直後の一定期間内(男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内)に被保険者とその配偶者の両方が14日以上の育児休業を取得した場合は、最大28日間、休業開始時賃金日額の13%相当額の出生後休業支援給付金が支給され、育児休業給付金と合わせて給付率が80%(手取りで10割相当)となります。

また、育児休業中は申出により健康保険・厚生年金保険料が免除され、勤務先から給与が支給されない場合は雇用保険料の負担はありません。

参考:厚生労働省|育児休業

育児休業は1歳6か月・2歳まで延長できる

育児休業は原則として子が1歳になるまでですが、保育所等に入れないなど一定の事情がある場合は、1歳6か月まで、さらに一定の要件を満たせば2歳まで延長できます。

保育所等に入れない場合の延長要件

代表的な延長理由は、保育所等への入所を申し込んでいるものの、子が1歳になる時点で入所できない場合です。

延長手続きでは、自治体が発行する入所保留通知書・入所不承諾通知書などが必要になります。

2025年4月から延長手続きの確認が厳格化

2025年4月から、保育所等に入れなかったことを理由に育児休業給付の支給対象期間を延長する場合は、単に入所できなかった事実だけでなく、「速やかな職場復帰のために保育所等の利用を申し込んでいたこと」も確認されます。

申請時には、育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書、保育所等の利用申込書の写し、保育所等を利用できない旨の通知などが必要となります。

会社側も、復職時期が近づいた段階で初めて確認するのではなく、本人へ早めに必要書類を案内しておくことが重要です。

参考:厚生労働省|育児休業給付金の支給対象期間延長手続き

産後パパ育休(出生時育児休業)とは

出生後8週間以内に最大4週間取得できる

産後パパ育休(出生時育児休業)は、子の出生後8週間以内に通算4週間(28日)まで取得できる制度です。

通常の育児休業とは別枠で利用できます。対象となるのは、産後休業をしていない労働者(日々雇用を除く)で、実務上は主に配偶者が出産した男性などが利用します。

2回に分けて取得できる

産後パパ育休は2回まで分割して取得できます。

例えば、出産直後に2週間、その後家族の状況に合わせてさらに2週間という取得も可能です。

分割して取得する場合は、原則として最初の申出の際に2回分をまとめて申し出ます。

産後パパ育休は原則2週間前までに会社へ申し出る

産後パパ育休は、原則として休業開始予定日の2週間前までに会社へ申し出ます。

2回に分けて取得する場合は、原則として最初の申出の際に2回分をまとめて申し出ます。

会社側は、申出を受けたら休業期間、業務の引継ぎ、雇用保険の給付や社会保険料免除の手続きなどを確認しておくとよいでしょう。

参考:厚生労働省|産後パパ育休

通常の育児休業とは別枠で取得できる

産後パパ育休を取得した後に、通常の育児休業を取得することもできます。

通常の育児休業も2回まで分割できるため、制度上は出生直後から複数回に分けて育児に関わる選択肢があります。

一定の手続きをすれば休業中に就業できる場合もある

産後パパ育休には、通常の育児休業にはない特徴として、一定の条件のもとで休業期間中に就業できる仕組みがあります。ただし、会社が一方的に働かせることはできません。

休業中の就業を可能とする労使協定があり、本人が就業可能日等を申し出、会社が就業日等を提示し、本人が同意するという手続きが必要です。就業できる日数・時間にも上限があります。

愛知県では男性の育児休業取得に奨励金があります

愛知県では、男性従業員の育児休業取得を促進するため、一定の要件を満たす中小企業等に対して「愛知県中小企業男性育児休業取得促進奨励金」を支給しています。

男性従業員が、産後パパ育休を含む育児休業を通算14日以上取得し、原職等に復帰した場合などが対象です。支給額は、育児休業の取得期間等に応じて50万円または100万円です。

参考: 愛知県|中小企業男性育児休業取得促進奨励金

育児休業は分割して取得できる

現在の制度では、通常の育児休業は子が1歳になるまでの間に2回まで、産後パパ育休も出生後8週間以内に2回まで分割して取得できます。

従来の「長期間まとめて休む」という育休だけでなく、配偶者の復職時期や繁忙期、保育園への入所時期などを考えながら、夫婦で取得時期を分担することもできます。

会社側は、一度育休から復帰したからといって「もう育休は終わり」と判断せず、再度の申出が制度上可能か確認する必要があります。

会社には育児休業制度等を個別に周知し、意向を確認する義務がある

本人または配偶者の妊娠・出産等について労働者から申出があった場合、会社はその労働者に対し、育児休業制度等を個別に周知し、休業を取得する意向があるか確認しなければなりません。2022年4月から事業主の義務となっています。

個別に周知する4つの事項

  • 育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)に関する制度
  • 育児休業・出生時育児休業の申出先
  • 育児休業給付に関すること
  • 育児休業・出生時育児休業期間中の社会保険料の取扱い

単に就業規則を渡したり、「育休を取りたいなら申し出てください」と伝えたりするだけではなく、対象者一人ひとりに制度を周知し、取得意向を確認することがポイントです。

取得を控えさせるような周知や意向確認は認められません。

【実務では】

  • 厚生労働省が公表している「13-1(妊娠・出産等申出時)個別周知・意向確認書、個別の意向聴取書記載例」を利用できます。
  • 自社で様式を用意していない場合は、この参考様式をベースに運用すると対応しやすいでしょう。

参考:厚生労働省|育児・介護休業等に関する規則の規定例・参考様式

2025年10月からは仕事と育児の両立について個別の意向聴取・配慮も必要

2025年10月からは、これまでの「育休制度を知らせ、取得意向を確認する」義務とは別に、仕事と育児をどのように両立したいかについて、本人の意向を個別に聴取し、その意向に配慮することも会社の義務となりました。

「育休を取るか」ではなく「どう働きたいか」を聴く

意向聴取の対象となる主な事項は、勤務時間帯(始業・終業時刻)、勤務地、両立支援制度等を利用したい期間、業務量や労働条件など仕事と育児を両立するための就業条件です。

例えば、「育休を取得しますか?」という質問は従来の意向確認ですが、「復職後は何時から何時まで働きたいですか」「勤務地や業務量について希望がありますか」と確認するのが、個別の意向聴取のイメージです。

妊娠・出産等の申出時と、子が3歳になる前に行う

個別の意向聴取は、本人または配偶者の妊娠・出産等の申出時だけでなく、子が3歳になるまでの適切な時期にも行う必要があります。

子どもの成長、保育園の状況、家庭内の役割分担などにより、希望する働き方は変わることがあるためです。

育休から復帰した後に利用できる両立支援制度

育児休業から復職した後も、子育てと仕事を両立するための制度があります。

それぞれ利用できる子の年齢や要件が違うため、会社側も従業員側も整理しておきましょう。

育児短時間勤務

会社は、3歳未満の子を養育する一定の労働者について、1日の所定労働時間を原則6時間とする措置を含む短時間勤務制度を設けなければなりません。

労使協定により対象外にできる労働者や、業務の性質上短時間勤務が困難な場合の代替措置も定められています。

参考:厚生労働省|短時間勤務等の措置

所定外労働の制限(残業免除)

小学校就学前の子を養育する労働者が請求した場合、会社は原則として所定労働時間を超えて働かせることができません。

2025年4月から対象となる子の範囲が、3歳未満から小学校就学前までに拡大されました。

参考:厚生労働省|所定外労働の制限(残業免除)

時間外労働の制限

小学校就学前の子を養育する労働者が請求した場合、会社は原則として1か月24時間、1年150時間を超える時間外労働をさせることができません。

「残業免除」と似ていますが、こちらは法定時間外労働の上限を制限する制度です。

参考:厚生労働省|時間外労働の制限

深夜業の制限

小学校就学前の子を養育する労働者が請求した場合、会社は原則として午後10時から午前5時までの深夜時間帯に働かせることができません。

夜勤のある職場では特に確認が必要な制度です。

参考:厚生労働省|深夜業の制限

子の看護等休暇

子の看護等休暇は、小学校3年生修了までの子について、病気やけが、予防接種・健康診断、感染症に伴う学級閉鎖等、入園(入学)式・卒園式の参加のために取得できる休暇です。

原則として1年度に5日、対象となる子が2人以上の場合は10日まで取得でき、時間単位での取得も可能です。

2025年4月から、従来の「子の看護休暇」から「子の看護等休暇」へ名称が変わり、対象年齢と取得事由が拡大されました。

参考:厚生労働省|子の看護等休暇

制度 対象となる子 主な内容
育児短時間勤務 3歳未満 1日の所定労働時間を原則6時間とする措置を含む制度
所定外労働の制限 小学校就学前 所定労働時間を超える労働を免除
時間外労働の制限 小学校就学前 時間外労働を月24時間・年150時間以内に制限
深夜業の制限 小学校就学前 午後10時~午前5時の深夜業を制限
子の看護等休暇 小学校3年生修了まで 病気・けが、学級閉鎖、入学式等のための休暇

3歳から小学校就学前は「柔軟な働き方を実現するための措置」がある

2025年10月から、3歳から小学校就学前までの子を養育する労働者に対し、会社は柔軟な働き方を実現するための措置を講じることが義務付けられました。

育児短時間勤務が原則3歳未満を対象としているのに対し、3歳以降の働き方を支える新しい制度です。

会社は5つの措置から2つ以上を用意する

  • 始業時刻等の変更
  • テレワーク等(月10日以上利用できるもの)
  • 保育施設の設置運営等
  • 養育両立支援休暇(年10日以上付与するもの)
  • 短時間勤務制度

会社はこの5つの中から2つ以上を選択して制度として用意しなければなりません。

どの措置を選ぶかを決める際には、過半数労働組合等から意見を聴く機会を設ける必要があります。

対象となる労働者は、会社が用意した措置の中から1つを選択して利用できます。

子が3歳になる前に個別周知・利用意向確認が必要

会社は、3歳未満の子を養育する労働者に対し、子が3歳になるまでの適切な時期に、自社が選択した2つ以上の措置の内容、申出先、残業免除・時間外労働・深夜業の制限に関する制度を個別に周知し、制度を利用する意向があるか確認する必要があります。

周知時期は、子が3歳の誕生日の1か月前までの1年間、具体的には1歳11か月に達する日の翌々日から2歳11か月に達する日の翌日までとされています。

「個別周知・利用意向確認」と「個別の意向聴取・配慮」は別の義務

ここは実務上、混同しやすいところです。柔軟な働き方の「個別周知・利用意向確認」は、会社が用意した制度を知らせて利用するか確認するものです。

一方、「個別の意向聴取・配慮」は、勤務時間帯、勤務地、業務量など、本人が今後どのように働きたいかを聴くものです。子が3歳になる前の時期には、この両方への対応が必要になります。

参考:厚生労働省|柔軟な働き方を実現するための措置

妊娠・出産・産休・育休を理由とする不利益な取扱いは禁止

従業員が妊娠・出産したこと、産前産後休業や育児休業等を申し出たり取得したことを理由として、会社が解雇、雇止め、降格、減給、不利益な配置変更などを行うことは禁止されています。

また、上司や同僚による妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントを防止するため、会社には方針の明確化、相談体制の整備、事実確認と適切な対応などの防止措置を講じる義務があります。

制度が就業規則に書かれていても、実際には「育休を取ると評価が下がる」「男性が育休を申し出にくい」といった職場風土があれば、制度を利用しやすい環境とはいえません。

経営者や管理職を含めて制度への理解を共有することが重要です。

参考:厚生労働省|不利益取扱いとハラスメントについて

育児休業を取得しやすい雇用環境の整備も求められる

育児休業や産後パパ育休の申出が円滑に行われるよう、会社には育児休業を取得しやすい雇用環境を整備する義務があります。次のいずれかの措置を講じる必要があります。

  • 育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
  • 育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備(相談窓口の設置)
  • 自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
  • 育児休業・産後パパ育休制度と取得促進に関する方針の周知

法律上はいずれかの措置を講じる必要がありますが、厚生労働省は複数の措置を行うことが望ましいとしています。

産休・育休中には社会保険・雇用保険の制度もある

産休・育休中は、休業制度だけでなく経済的な支援もあります。

代表的なものとして次のような制度があります。

  • 出産育児一時金:出産費用の負担を軽減するための健康保険の給付
  • 出産手当金:産休中に給与が支払われない場合などの所得補償
  • 育児休業等給付:育児休業や育児のための短時間勤務をした場合などに雇用保険から支給される給付
  • 社会保険料の免除:一定の要件を満たす産休・育休期間について健康保険料・厚生年金保険料の本人負担・会社負担を免除

給付額や申請方法は制度ごとに異なります。また、2025年4月からは出生後休業支援給付金や育児時短就業給付金も創設されています。

人事担当者は休業制度だけでなく、給付や社会保険の手続きもあわせて案内できるようにしておくとよいでしょう。

参考:日本年金機構|保険料の免除等(産休・育休関係)

参考:厚生労働省|育児休業給付について

妊娠・出産・育児で利用できる制度を一覧で確認

最後に、この記事で紹介した主な制度を「誰が・いつ利用できるか」という観点から整理します。

制度 主な対象 時期・子の年齢 主な内容 本人がすること
産前休業 出産する女性 予定日の6週間前~(多胎14週間前~) 本人の請求により休業 出産予定日・開始希望日を伝え、会社へ請求
産後休業 出産した女性 出産翌日~8週間 原則就業禁止 原則、本人からの請求は不要
母性健康管理 妊娠中・産後の女性 妊娠中~産後1年 健診時間確保、医師等の指導に応じた措置 健診時間の確保や医師等の指導内容に応じた措置を会社へ申出
育児休業 男女 原則1歳まで 育児のための休業。一定の場合2歳まで延長 原則1か月前までに会社へ申出
産後パパ育休 産後休業をしていない労働者 出生後8週間以内 通算28日まで、2回に分割可能 原則2週間前までに会社へ申出
育児短時間勤務 一定の労働者 3歳未満 原則6時間の短時間勤務措置 会社へ申出
残業免除 一定の労働者 小学校就学前 所定外労働を免除 会社へ請求
時間外労働の制限 一定の労働者 小学校就学前 月24時間・年150時間以内に制限 会社へ請求
深夜業の制限 一定の労働者 小学校就学前 午後10時~午前5時の深夜業を制限 会社へ請求
子の看護等休暇 一定の労働者 小学校3年生修了まで 病気・けが、学級閉鎖、入学式等で休暇 会社へ申出
柔軟な働き方の措置 一定の労働者 3歳~小学校就学前 会社が5つから2つ以上を用意し、本人が1つを選択 会社が用意した措置から1つを選び、利用を申出

実務では「誰が・いつ・何をするか」まで整理しておく

制度を知っているだけでは、実際に妊娠・出産の申出があったときに対応できないことがあります。

会社では、

  1. 誰が相談を受けるか
  2. 本人にどの様式を渡すか
  3. いつまでに申出を受けるか
  4. 誰が社会保険・雇用保険の手続きを行うか
  5. 休業中・復職前にいつ連絡するか

まで決めておくと実務がスムーズです。

まとめ|制度を「対象者・期間・条件」で整理しておこう

妊娠・出産・育児に関する制度は、産休と育休だけではありません。

妊娠中の母性健康管理、産後パパ育休、育児短時間勤務、残業免除、子の看護等休暇、3歳以降の柔軟な働き方など、子の成長に応じて利用できる制度が変わっていきます。

経営者・人事担当者は、「会社に何が義務付けられているか」「対象者から申出があったときにどの制度を案内すればよいか」を整理しておくことが大切です。

従業員側も、自分が利用できる制度を知っておくことで、仕事を続けながら妊娠・出産・育児をするための選択肢が広がります。

特に2025年には、子の看護等休暇や残業免除の対象拡大、3歳以降の柔軟な働き方を実現するための措置、仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮など、大きな改正が施行されています。

以前の知識のまま運用せず、厚生労働省などの最新情報を確認しながら制度を整備・運用していきましょう。

※本稿は2026年8月時点の法令・厚生労働省等の公表情報をもとに作成しています。制度改正が続いているため、実際の運用時には厚生労働省等の最新情報もご確認ください。

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